庶民の足


これはフィリピンの『ジープニー』という乗り物。地元の人は『ジープ』と言ってる。画が小さくて見えないけど、フロントガラスの横のほうに行き先の看板がぶら下がってる。それと車の両サイドに行き先までの経路の通りの名前が書かれている。大通りだとたくさん走っててこの行き先を見極めるだけでも大変なんですが、なにしろ土地勘がないとどこに行くのかさえわからないから外国人が乗りこなすにはハードルが高い。この画像は10年以上前のものなんですが、たいていのジープは派手派手に飾りつけ、中には音楽をガンガン鳴らしながら走ってるのもいる。後ろの部分に通勤電車みたいな横椅子があって、後ろから乗り込む。混んでくると助手席にも座り、さらに混んでくると後ろの入り口にしがみついたりする。田舎に行くと荷物を屋根にまで満載したものや、人も屋根に上がってたりもする。北部ルソンのアパリまで行ったときには、嘗て共産ゲリラがいたからか、フロントガラスに銃弾の痕が残ってるのが結構たくさんあった。おもしろいのは料金の支払い時。ドライバーが運転しながら回収するんですが、横椅子なんで後ろに行けば行くほどドライバーは届かない。ましてや後ろにぶら下がってる人なんて絶対に届かない。そこで、ミラー越しにドライバーはちゃんと見ていて、新しいお客が乗ってくると大きな声で『イラン?(何人?)』とか聞いてきたり、黙って肩越しに手を出して支払いを催促したりもする。手が届く人は普通に渡すんですが、問題は後ろの人。後ろの人は近くの人にお金を手渡して、その人がまた手渡してと、バケツリレーみたいにドライバーに届く。逆におつりの場合は、同じようにリレーで返ってくる。おじさんもおばさんもヤンキーも子供も同じようにリレーする。なんかほのぼのであったかい感じがしました。その際に行き先を告げたり、人数を告げたりする。『サキアポ、ダラワ(キアポまで、2人)』といった具合です。慣れてくると文法的に合ってるのかどうかは知りませんが、『ダラワンキアポ』なんて言ったりもする。タガログ語は単語と単語をつなぐ時に『N』や『NG』を入れて音を滑らかにするようなんです。降りるときは大声で『パラ!(降ります!)』とか『サタビランホ(端に寄せてください)』などと叫ぶとドライバーがとめてくれます。あるいは思い切り天井を『ドンドン』と叩いたりしてもとまってくれます。これを乗りこなせるようになると、庶民の生活圏に入ることになりまたふれあいも生まれるんで、かなり『ツウ』っぽくなれた気になります。必要なのは通りの名前や行き先の地名などある程度の『土地勘』と、人数分の数字『イサ、ダラワ、タトゥル、アパット、リマ(1、2、3、4、5)』でしょうか。それともうひとつ『マラーミンサラーマット(どうもありがとう)』も覚えておきたいですね。