行方がわからない
ウチは複雑なんですよ。
祖父の死で財産争いになって、父方の親戚とは絶縁状態。
親父には2人の姉と1人の弟がいて、
2人の姉が組んで、祖父が残したらしい遺言書を盗み入るように奪って処分し、
財産の分割を要求して来たんです。
財産と言っても現金はほとんどなく、住んでいた土地家屋の分割を迫って来たので、
いろいろと大変だったらしい。
祖父の世話も葬儀でさえなんにも手伝わなかったらしいこの2人の姉。
以後ウチの家族は完全に絶縁することになったんです。
そんな骨肉の争い中、唯一味方してくれたのが弟の嫁のY子叔母さん。
実は2人の姉の極悪非道に弟でさえなにもできず、”中立”という逃げをうったらしいです。
住んでいる土地を分割すれば後々の混乱は必至だから、
当時なけなしの現金をかき集めて、借金までして、対価を支払ったんだそうです。
そんなときY子叔母さんは、
主人(父の弟)に”このお金は受け取ってはいけない”と言ったんだそうです。
このY子叔母さん、実はウチが絶縁した後しばらくしてから若くして亡くなったらしいんです。
母が最近言うには、
そんな”Y子さんに一度お線香をあげたい”と。
当時の苦労を思い出したのか、そう言うんです。
ところが直系でない親族の戸籍は委任状がないと役所とかでも調べようがない。
Y子叔母さんには子どももいなかったし、実家とかもわからない。
絶縁したわが家が知りうる最後の住所へ行ってみたがなんの手がかりもなかった。
どうしたら、母のささやかな願いを叶えてあげられるんだろう…。