音速雷撃隊/松本零士
第5回もせっかく実家から運んできたんで、
松本零士著の短編、”音速雷撃隊”です。
(小学館サンデーコミックス『戦場まんがシリーズ・オーロラの牙』より)
初版は、昭和51年1月です。
大戦末期に投入された新兵器、”桜花”のお話です。
米艦隊は写真解析の結果、一式陸攻にぶら下がってる大型魚雷のようなものが、
新型の特攻兵器、人間爆弾”桜花”であることを突き止める。
主人公は、若い野中少尉。
”桜花”搭乗員として出撃するも、野中ひとりが生還してしまうことに。
野中は特攻隊員として生き残ってしまったということに『めんぼくない』と詫びるも、
護衛戦闘機隊の搭乗員からは『明日は体当たりしてでも、完全に護衛する』詫びられる。
皮肉にもロケット技師を目指していた野中は、
『二十年だけでもいい…それだけあれば、必ず人間の役に立つことをしてみせたのに…』と
生まれた時代をのろいつつ…、
”死ぬのは自分だけでいい”と、明日の出撃を最後にすると覚悟を決め、
敵艦まで運んでくれる一式陸攻の搭乗員には、
『母機があやうくなったら、おれなどさっさと切りはなして逃げろ』と告げる。
いよいよ出撃するが、
防弾装備が脆弱な母機・一式陸攻は危険な状態に…。
”桜花”は搭乗員が操縦しながら敵艦に体当たりする有人ロケットの”特攻兵器”。
航続距離がとても短く、攻撃目標が目視できる距離まで行かないと意味がない。
”死ぬ”ことが確実な野中を、
敵艦載機の攻撃が激しいなか、必死に運ぶ一式陸攻搭乗員たち。
そんななか、いよいよ攻撃目標の敵艦が見えた!
野中は切りはなされる!!
実際に”桜花”が出撃したのは大戦末期の昭和20年3月~6月。
計56機の”桜花”が米機動部隊に突入したようですが、
戦果は”駆逐艦1隻を撃沈”し、ほか数隻に損傷をあたえたのみ。
”桜花”搭乗員はもちろんのこと、速力を大幅に失って敵の砲撃にさらされた一式陸攻の搭乗員、
護衛の戦闘機隊搭乗員や、さらに開発・訓練などにたずさわった大勢の命を奪いました。
このまんがの最後に”広島の原爆投下”にふれていることから、
当然ながら”フィクション”であることが認識できますが、
実際の”神雷部隊”を指揮した人物は”野中少佐”で、
”桜花”での”特攻”の矛盾を最後まで反対していた人物なんだそうです。
彼は昭和20年3月の出撃で”戦死”してます。